上司に秘密を握られちゃいました。

彼に、今の気持ちをそのままぶつけよう。
恋愛経験のない私には、うまい駆け引きなんてできそうにない。


しばらくして、一度調理した食事を温めはじめた。

佳乃さん、料理うまそうだな……。
一瞬、そんなことを考えて溜息が出たけど、負けたくない。

チキンのソースが、コトコト音を立て始めるのを聞きながら、自分の気持ちを再確認した。


――ピンポーン

それから十分ほどしてチャイムが鳴った。
真山さんだ。

慌てて玄関に走り鍵を解除すると、息を切らせた真山さんがうれしそうに微笑んだ。


「おかえりなさい」

「ただいま、藍華」


心臓がドクンと跳ねる。
新婚みたい。


「いい匂いがする」


玄関に入った彼は、私の顔を覗き込む。


「食事作ったんです。お口に合うかわかりませんけど……」

「合うに決まってるさ」


そう決めつける彼がおかしい。
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