上司に秘密を握られちゃいました。
真山さんの家が見えてくる。
電車の中で何度かスマホが震えたけど、出ることができなかった。
「遅くなって、ごめんなさい」
「心配したよ、藍華」
チャイムを鳴らすとすぐに真山さんが出てきてくれた。
息を荒げる私に驚いている彼は、安堵したような顔。
「先に帰ってると思ったから」
「ごめんなさい。訳あって家に……」
まだ肩で大きく息をしたまま、紙袋からケーキを取り出す。
「バレンタインのケーキです。
でも、ラッピングしたのに、落としてしまって……。それで家に取りに……」
「そうだったのか。藍華、ありがとう、うれしいよ」
真山さんはお皿に乗っただけのガトーショコラを、満面の笑顔で受け取ってくれた。
「とにかく上がって?」
本当は食事を用意してと思っていたのに、それもできなかった。
だけど、今日の目的はなんとか果たせた。