上司に秘密を握られちゃいました。
「いい匂いだ」
「あっ、ちょっと焦げ臭いですよね……」
「いや、急に腹減ってきた。着替えてくる」
彼はそのまま二階へと上がって行った。
副社長のことをなにも言わない。
やっぱり仕事の話なのかな……。
取り越し苦労だったかもしれないと胸を撫で下ろしたけれど、着替えてきた彼は、テーブルに料理を運ぶ私の手を止めた。
「ちょっと、先にいい?」
「はい」
ドクンと心臓が打つ。
さっきまでの柔らかい雰囲気が消えている彼は、私の両肩に手を置いて、真っ直ぐな視線を送る。
「佳乃が……」
その名前が出た瞬間、私の心配が当たっていたことを知った。
「佳乃が、副社長に俺たちのことを話したらしい。
社内恋愛禁止ではないし、もちろん、俺はバレても構わないと思ってた。だけど……」
彼は言葉を濁す。