上司に秘密を握られちゃいました。

彼はいつも優しい。

今のところ私は、さほど残業もなく帰してもらえる。

だけど、公孝さんは違う。
毎日のように残業がある。

それは、それだけ彼がいないと回らない仕事がたくさんあることの裏返しだった。
企画についても各売り場のバイヤーと共に走り回っているし、売り場での客の対応もすべてこなしている。


「私は大丈夫ですよ」

「でも俺、藍華の近くにいたいから」

「そんな……あはは」


手を泡だらけにしている公孝さんが、冗談を言ったと思った。
でも……。


「本気だぞ。ひとときも離れたくない」


一瞬手が止まる。
驚いて隣の彼を見上げると、すぐに唇が重なった。


プライベートの公孝さんは甘い。
こんな人だとは知らなかった。

こんな彼を佳乃さんも知っているのかと思うと、ちょっぴり妬ける。
だけど、この唇の甘さに、気持ちが満たされる。
< 302 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop