上司に秘密を握られちゃいました。
「佳乃」
公孝さんの凛とした声で、佳乃さんの顔つきが変わる。
「君も前に進んでほしい。君をこれ以上、嫌いになりたくはない」
佳乃さんは唇を噛みしめ、目を伏せた。
そして、なにも言わずに振り向いて東郷を出て行く。
その様子を見送りながら頭を下げると、「本当に君は……」という彼の声。
「いつも真っ直ぐ前を向いている。
その姿が魅力的すぎて、やっぱり離せない」
どれだけ周りがざわついていても、大好きな人の言葉だけは、はっきりと聞こえる。
ちょっと恥ずかしくてはにかむと、彼もまた照れくさそうな笑みを浮かべた。
そして……。
「西里さん」
「は、はい!」
上司の顔に戻った公孝さんは、「お疲れ様だったね」と私をねぎらう。
「いえ、大成功でしたね。私も、うれしいです」