あやしやあんどん
 サトリは思い出した。そして、目の前のハクトに言う。


「約束、果たさないといけないのね」

「そう、そのために来たの。君を迎えにね」

「迎えに?」

「僕ね、死神なの。だから、自分の人間としての寿命については知ってたんだ」

「死神?」

「うん。僕は君と会うためだけに人間として生きた。香苗と裕太は僕と仲良くしてくれた。だから、君を連れていくために利用したんだけどね」

「利用・・・て」


 ハクトがにやりと笑った。その笑みにサトリはゾクッとした。


「少しね、手を加えたの。あ、大丈夫。許可はもらってるから!」

「手を加えたって何を?」

「裕太の寿命を早めたんだ」

「なんてことを・・・!」


 彼の顔は楽しんでいるだけだった。あの日から何も変わらない。彼は、ただ無邪気に遊ぶ子供のようだった。
 サトリは目の前のハクトを睨み付けた。


「僕は悪くない。裕太は死なない。サトリは僕と約束したでしょ?」

「そこまでして、なんで・・・」

「僕は死神。サトリも死神なんだよ。半端ものだけど。人の寿命が見えることはよくないことなんだ」


 サトリの手をハクトが握る。握られたハクトの手に温かさは感じない。まるで、死人のようだった。。


「寿命が見えないからこそ、人は生きていけるんだ。君は、見えているからこそ、そのことを知っている」

「・・・・・・」

「僕はサトリの味方だよ?サトリがどんなに僕のことを嫌いでも、僕はサトリと一緒にいる」


 握られた手に温かさはなかった。しかし、サトリの目には涙が浮かんでいた。ハクトの言葉に嘘偽りはない。
 ハクトが嘘をつくような性格でないことをサトリは知っている。


 なんで今まで忘れていたのだろう。


 それは、自分とハクトとの関係を忘れたかったからだ。悲しいのなら、こんなに辛いのなら、全て忘れてしまおうと思ったサトリの想いのせいだった。
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