君をひたすら傷つけて
「高取のマンションを出たでしょ」

 篠崎さんの言葉にドキッとしてしまい、でも、平静を装いながらコットンを肌に乗せる。指先が震えないようにするのが大変だった。

「もう甘えられないと思って出ました。高校生の時からずっと妹のように可愛がってもらい、高取さんには甘えてきました。ですので、私のお守りから解放してあげたくて」

 イタリアでのことは私がお兄ちゃんに甘えたことから始まっている。お兄ちゃんが責任を取ると言われたくなかったので、一緒に住むことが出来なくなったけど、今は少しでもお兄ちゃんが幸せになってくれればと思う。

「そうなんだ。でも、それって無理してない?高取と雅さんって、一緒に住む前から仕事をしている時も、していない時も楽しそうだったよね。ずっと一緒に楽しそうに過ごしていたから、高取にとっては妹だとかお守りとか思ってなかったと思うよ。高取は雅さんが居なくなったことで無理をしているよ」

「無理ですか?」

 お兄ちゃんは自分の生活を乱すようなことはしない。自分を律することが出来る。私がマンションを出たからと言って、篠崎さんが言うほどの無理はしてないような気がする。

「無理というか、やせ我慢と言うか、融通が利かないというか。陰ながら支えたいとか、自己犠牲の真っ只中。雅さんは高取に幸せを願ったりしてる?俺は心の底から高取には幸せになって欲しいと思っている。俺が大学の時に出会ってから、ずっと支えて貰っている。父親が亡くなった時も、傍にいてくれたのは高取だった。俺には高取が必要だから、幸せになって貰いたいんだ」
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