君をひたすら傷つけて
「いえ、私の方も楽しませて貰いました。スタッフも待ってますので、先に衣装に着替えて貰ていいですか?」

「実はドラマの撮影が長引き、そのままで来たので、撮影の時のままです。クライアントの意向に合わせて、髪形を直すのに時間が掛かったらすみません」

「大丈夫ですよ。ただ、メイクが少し濃いので、全部落としてから、再度整えます」

 篠崎さんの衣装の一枚目はシンプルな黒のシャツに黒のボトム。髪も後ろに流してシャープさを引き立たせるようにスタイリングする。そして、二枚目は逆に白のシャツに白のボトムだった。ふわっと自然に揺らす髪が魅力を奏でる。今回のドラマの役は二面性を持つ男性が一人の女性と出会い、白と黒が融合していくというものだった。

 雑誌の特集記事は見開きで六ページの特集を組まれている。ドラマの特集記事とは別に篠崎さんだけのページもあるから、それだけの人気があると言える。ミラノ映画祭での受賞もあるけど、今までの積み重ねだろう。

 白と黒のシンプルな服が一段と魅力を引き出し、モノトーンの中にあっても篠崎さんは自分で自分の色を作れる人だった。

 目指すコンセプトは自然な融合。
 
 元々、篠崎さんは肌も綺麗だから化粧を取った方が絶対にいいに決まっている。篠崎さんに椅子に座って貰い、私はコットンにクレンジングを付けると肌に負担にならないように、拭いていくと、篠崎さんは目を閉じたまま、静かに私だけに聞こえるように言った。


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