君をひたすら傷つけて
「元気だったけど……？」

「なんだろ。よくわからないけど、自分が何をしたらいいのか考えたよ。ずっと、雅と一緒にマンションに住んでいたから、一人になると広く感じた。前に戻っただけなのに、広く感じたんだ雅はまりえさんの所に居ただろ」

「知ってたの？」

「ああ。最初は確証がなかった。
　雅がマンションから出ていって、しばらく、リズさんのところに通ったよ。通い続けて一か月くらいした時に両親の所ではないことを教えて貰った。実家に連絡することも考えたけど、もしも、実家に居なかったら、ご両親が心配するだろ。

　それから二週間後に、リズさんとは一緒に住んでないことを教えて貰って、それからまた、二週間後に、やっと、まりえさんのところにいるって教えて貰った」

　そんな話は初耳だった。リズのところにお兄ちゃんが通ったなんて思いもしなかったし、そんなことになっているとは聞いてなかった。リズもエマもまりえも何も言わなかった。

「毎日通ったの？」

「さすがに毎日は無理だったけど、出来るだけ時間を作ってはリズさんのところに行ったよ。リズさんしか雅の行き先を知っている人は居ないから、リズさんに教えて貰うしかなかった」

「なんで？」

「雅を取り戻すって決めたから」

「なんで？」

「それは仕事が終わってからゆっくり話したい。撮影が終わったら、雅をマンションに連れて帰る」

「なんで？連れて帰るって。私の意思は？？」

「今は仕事に集中しよう」

　そんなことをいい、お兄ちゃんは眩いライトの中でポーズを取りながら、微笑む篠崎さんを見つめた。真剣な眼差しの前に私はどうしていいか分からずに、その場から逃げ出したくなっていた。
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