君をひたすら傷つけて
「そうね。それもいいかも。まりえも遊びに来れるくらいに広い部屋もいいわね」

 そんな話をしているうちに荷物の整理は終わり、ちょうどその頃に篠崎さんはクライアントとの挨拶も終わったようだった。撮影の終わったばかりのデータは修正も何もしていないのに、このまま雑誌に掲載してもいいほどの出来だった。

「そろそろ、篠崎さんたちも帰るみたいだから、私たちも帰りましょ。雅はどうする?途中まで車に乗ってく?」

「駅に行くから大丈夫。時間もあるし、少し気持ちの整理もしたい。高取さんからは詳しいことは、まだ連絡ないけど帰りたくなったら、自分で帰れるように駅に向かうつもりよ。高取さんは篠崎さんを送迎したりするだろうから、待たないといけないかもしれないから駅の方が都合がいい。でも、途中で帰りたくなったら帰る」

「雅の好きにしたら。検討を祈るわ。また明日以降にでも今日のことを聞くから」

「もしかしたら、そんなに話すことないかもしれないけど」

「ま、それは明日以降に。じゃ、お疲れさま」

「お疲れさまでした」

 片付けが終わるとリズはたくさんの衣装と荷物を載せた車に乗り込み、事務所に戻っていった。お兄ちゃんは篠崎さんを送ってくるか、芸能事務所に戻るだろうから、しばらくは連絡がないだろう。私は駅で少しゆっくりとして、それから、どこまでお兄ちゃんに話すかを考えようと思った。

 お兄ちゃんの子どもがお腹にいることを言うべきが言わない方がいいのか……。悩む。
< 1,007 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop