君をひたすら傷つけて
 しばらくして、また、部屋のドアがノックされた。

「どうしたの?」

 お兄ちゃんもシャワーを浴びてきたのか、髪が少しまだ湿っていて、懐かしいシャンプーの香りがする。その香りに包まれていると、急にお兄ちゃんは少しだけ腕に力を込めた。私はお兄ちゃんの腕の中で、頬をお兄ちゃんの胸に寄せると目を閉じた。

「雅。俺の部屋に来ないか?雅が嫌がることはしないし、無理をさせるつもりもない。雅が傍にいることを感じるだけでいい。少し離れていた時のことを聞きたい。雅のことをもっと知りたい。これからのことも話したい」

「あの、でも、私……」

「俺の部屋に来るのは嫌か?そうだよな。今までずっと兄妹の関係が長かったのに、急に結婚を前提と言われても戸惑うな」

「そうじゃなくて……」

 私が拒絶したと感じたのか、お兄ちゃんは腕の力を緩め、私の顔を覗き込んだ。見透かすような真っすぐな視線に……いたたまれなくなる。

「妊娠しているの」

「……。今、なんて?妊娠??」

 しまった。こんなタイミングで言うつもりはなかったのに。

 そう思った時には遅く、お兄ちゃんは私の言葉を理解したのか、驚いたように目を見開いた。たった一夜のことで遺伝子が欲しいと言ったものの、妊娠するとは思いもしなかった。多分、お兄ちゃんも私が妊娠しているとは思わなかっただろう。

 でも、私の身体にはお兄ちゃんの子どもがいる。

 
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