君をひたすら傷つけて
 好きだからお嫁さんになりたいという。
 好きだから、妻になって欲しいという。

 そんな素直な気持ちをお互いに重ねた。

 静かに始まった優しさは、こうして恋になっていくのだと感じた。ただ、好きだという気持ちが私を包み、幸せだと思った。思いだすことの全てが愛しく、優しさに満ちている。フィレンツェの夜が私とお兄ちゃんの間にあった壁を少し取り除いてくれたのかもしれない。

「幸せ過ぎて怖い気がする」

 好きな人に好きだと言われ、お腹にいる子どもを慈しむかのように腰のあたりを撫でた。その温もりがあまりにも気持ちよくて、私は目を閉じた。夢なら醒めないでと……。

「気持ちいいけど、眠たいのに、眠れない気がする」

「俺もだよ。さ、横になって、気持ちが落ち着くまで少し話をしてから寝よう。今日は色々あって、雅の身体にも負担をかけている。妊娠しているなら、慎重にしないといけないな」

「大丈夫だと思うけど」

「そうだけど、初めてのことだから、きちんと勉強しないといけないな。風呂とか分からないし」

「父親学級もあるみたいよ」

「そんなのがあるなら、是非とも参加した方がいい。生まれて慌てるよりは、先に知識と技術を身に着ける必要がある」

「お兄ちゃんなら何でも出来そう」

「そうだといいけど」

「雅。これからは『お兄ちゃん』は封印で」

「じゃ、高取さん??」

「結婚したら、雅も高取になるよ」
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