君をひたすら傷つけて
 好きという気持ちもあった。

 傍に居たいとも思った。

 でも、結婚して同じ苗字になるという実感はなかったのが本音だった。私にとっての結婚は夢物語で実際には雲を掴むようなものだったから。でも、目の前に指輪があり、私に愛を囁く人がいる。実感はないのに、次第に自分の置かれている状況が見え出していた。

「結婚なんて実感がない。ただ、この子を無事に産みたいとは思っていたけど、結婚は考えてなかった。だって、同情だと思っていたから」

「同情じゃないよ。俺は結婚するなら雅がいいと思っていた。ただ、雅が望まないなら、ずっと兄でいるつもりだったけど、お腹の中に子どもがいるなら躊躇する必要はない。俺のためにも子どものためにも雅には結婚して欲しいと思う」

 ずっと、傍にいてくれて、私を支えてくれた。自分の恋を自覚して、離れてみて、慎哉さんの存在が自分の中でこんなにも大きくなっていると感じた。好きとか嫌いとかではなくて、私には慎哉さんが必要だった。

「篠崎さんと里桜ちゃんの結婚式を見て、心が震えるほど感動したの。で、泣きたくなった。幸せを祝う気持ちと愛し愛されることを羨ましいと思った。でも、あの夜、私の中で何かが変わった気がする。義哉のことを思って、一生懸命生きようと思っていた。でも、あの夜。私は自分の気持ちを優先した。幸せになりたい。ただ、それだけだった。」

 私は慎哉さんの腕に抱かれながら、気持ちを吐露すると、それを優しく温もりが包んだ。

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