君をひたすら傷つけて
 私がマンションの前で手を振ると、慎哉さんは仕事に行ってしまった。私をまりえのマンションまで送ってからの出勤だからギリギリになっているだろう。それに、篠崎さんを待たせてしまったかもしれない。

 まりえのマンションに入り、オートロックを解除してエントランスに入り、エレベーターのボタンを押すと、目の前に左手の薬指が光っているのが見えた。夜に見た時はさほど感じなかったが、朝の光の中で、ダイヤモンドはキラキラと輝き、煌めいていた。

 なんとなく、結婚することを意識してしまう。嬉しい気持ちと不安な気持ちが入り混じってた。もしかしたら、もう、まりえはマンションを出ているかもしれないと思ったけど、部屋の中に入るとまりえはニッコリと笑った。

「ただいま」

「おかえりなさい。リズから連絡があって、今日は少し遅めの出勤でいいらしいわ。
 それと篠崎さんの仕事の連絡が入っている。スケジュール確認をしておいてって。エマは急遽、ニューヨークでの仕事が入ったからから、先ほど成田に向かったわ。日本での仕事はリズと雅ですることなるけど……大丈夫そうね」

 朝帰りした私の薬指を見て、まりえはニッコリと笑って抱き寄せた。
 その温もりに安心する。

 たった一日でこんなにも気持ちが変わるなんて思わなかった。妊娠していることも言うつもりもなかったけど、ついぽろっと言ってしまった。それでも受け止めてくれたことが嬉しくて安心した。
< 1,025 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop