君をひたすら傷つけて
 お参りを終わらせて車に乗り込むと、慎哉さんはゆっくりと私の手に自分の手を重ねた。さっき私が泣いてしまったのを気にしているのかもしれない。

「何か飲むなら、自動販売機で買ってくるし、気分が悪いなら、もう少しここにいてもいい」

「大丈夫。心配しないで。さ、帰りましょ。マンションが落ち着くから」

「わかった。具合が悪くなったら、すぐに言うんだぞ」

 そんな優しい言葉と共に動き出した車はマンションに向かって走り出した。車の中では静かに音楽が流れていて、慎哉さんも私も言葉少なだった。私は既に暗くなりつつある窓の外の景色を見ながら、車の心地よい揺れに身を任せ、私はゆっくりと目を閉じた。

 そして、次に目を覚ましたのは慎哉さんの寝室のベッドの上だった。

 最近見慣れた天井が視界に入り、私は真っ暗な中、身体を起こすと、リビングの方を見た。義哉のお参りを終わらせてから、車で寝てしまったのを慎哉さんが運んでくれたのだろう。ベッドの横に置いてある時計を見ると既に夜中の10時を回っている。

 昼からお参りに行って、その帰りに寝てしまったにしては寝すぎている気がした。妊娠してから睡眠時間が増えたには増えたが、それにしても寝すぎだと思った。

 隙間から差し込む光を頼りにリビングに行くとリビングのソファに座って目を閉じている慎哉さんの姿があった。どのくらい寝ていたのか分からないけど、ダイニングテーブルの上には食事の用意がされてあり、慎哉さんは既に食事を終わらせたようで、リビングのテーブルの上には仕事の資料が並べられていた。
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