君をひたすら傷つけて
 きっと、慎哉さんの事だから、お墓参りに帰りにレストランで渡すつもりが、私が寝てしまったから、こんな風になってしまったのだろう。子どものこともあるから、そろそろ籍は入れないといけないけど、私の方から何となく言いにくいと思っていた。

「もしかしたら、どこか予約していたの?」

「ま、そうだけど雅の身体が一番だから」

 妊娠から始まった結婚だけど、慎哉さんが色々と心配りしてくれるから、私は幸せだと思う。真面目な性格だから、二人で義哉のお参りに行ってからと、きっと思ったに違いない。お参りをして、レストランでもう一度プロポーズして、婚姻届に署名捺印のつもりが私が寝たことで全て流れてしまった。

「ありがとう。今、私も書いていい?」

「今書くのか?」

「うん。こういうのは後に伸ばすよりもすぐがいいと思うの」

 私は自分の部屋から印鑑を取ってくると、慎哉さんの万年筆を借りて、婚姻届に自分の名前を書き、印鑑を押した。まだ、証人欄は空白だけど、なんとなく、きちんと収まる場所に収まったような気がした。

「これでいいのかな」

「ああ」

 並んだ名前にこれから一緒に生きるという気持ちを胸に、私は慎哉さんの胸に抱き着いた。包まれる温もりに私は目を閉じた。

「これからもよろしくお願いします。旦那様」

 囁く言葉に慎哉さんは何も言わず、少しだけ力を込めてキュッと抱き寄せた。この一瞬が、積み重ねていき、いつか永遠になることを祈りながら見つめると、静かに慎哉さんの顔が近づいてきて、私の唇に優しく唇が重ねられた。
 
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