君をひたすら傷つけて
「早めに準備しても時間は掛かるからな。さ、明日は仕事の終わったら、海にお願いして、明後日に区役所に提出するけどいいか?それから、雅の実家に挨拶に行って、それから……焦るな」

「大丈夫よ。入籍したら、実家に電話だけすれば、挨拶はそのうちでいいと思うし、それに実家の両親は慎哉さんのことをよく知っているから、大丈夫よ」

 実際に私が東京で一人で生活する上でどれだけ世話になっているのかも知っているし、お母さんに言わせると『きっとそうなる』と思っていたらしいし、慎哉さんの真摯な姿勢に感謝さえしていた。それに妊娠したことを知っているので、時間を掛けて実家に行くことを喜ばないだろう。

「でも、子どもも生まれるし」

「それも大丈夫。きちんと説明しているから。少しフェイクを入れているけど」

「フェイク?」

「お互いに好きで、子どもが出来たって」

 流石に篠崎さんと里桜ちゃんの結婚式で心が揺れて、迫ったなんて親には言えなかった。だから、気付いたら好きになっていて、子どもが出来たってことにした。

「それはフェイクじゃないよ。俺は雅のことが好きだし。雅もだろう。お互いに好きで子どもが出来たってことだろ。ただ、言葉に出来なかっただけで。一番大事なのは俺と雅の気持ち」

 確かにそうだけど、実際に言葉にすると恥ずかしい。サラリとそんなことをいう慎哉さんは平然とした表情だった。それが一段と恥ずかしさを増した。

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