君をひたすら傷つけて
 緊張していると言いながら見て目にはいつもと変わらない。でも、こんな慎哉さんだから、私が緊張しすぎないのかもしれない。ソファに座る私が立ち上がってキッチンの方に行こうとするのを慎哉さんは止めた。

「自分でするからいいよ。雅はゆっくりしていて」

 そういうと、慎哉さんはキッチンに行き、自分のマグカップにコーヒーを注いだ。今は身体のことを考えて、コーヒーは飲まないようにしているけど、香りに包まれると安心する。慎哉さんが毎朝コーヒーを飲むから、少し早いけど、準備したのが冷めないでよかった。

「今日は出来るだけ早い時間に行かないか?」

「それは構わないけど、何で?」

「こんな風に二人とも緊張して、リビングで時間を過ごすよりは、二人でゆっくり出かけないか?子どもの備品も買いに行こう」

 お互いに仕事が忙しく、産着の一枚から買わないといけないのは分かっているけど、ずっとまりえのマンションに居たから、何も準備出来てなかった。今はインターネットショッピングでもいいかなって思っていた。慎哉さんから言われると思わなかった。

「今は通販とかもあるから」

「それでも、初めて生まれてくる子なのだから、デパートや専門店に行くのもいいと思う。カタログやパソコンの画面では分からないだろ」

「わかった。でも、まだ、子どもの性別も分からないし」

 多分、次回、産婦人科で検診をすれば、きっと、性別は分かるだろう。でも、性別を聞くのをどうするかというのは夫婦に委ねられる。
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