君をひたすら傷つけて
 慎哉さんは目の前に出された、刻印イメージを見ながら、少し悩んでいるようで、私の方を見て、少し困ったような表情を浮かべた。私は刻印どころか、マリッジリングの事さえ、頭になかった。今朝、結婚式はするらしいということだけは決まったけど、婚姻届を提出するだけで頭も心もいっぱいでその他のことは何も考えられなかった。

 それにしても刻印は色々な言葉が刻まれる。日付だけかと思ったけど、それだけではなかった。実際に聞くと赤面しそうな言葉が並んでいる。英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ラテン語……。それに二人の好きなラブソングからなんてものもあった。

 言葉はたくさんある。本当に愛の言葉もたくさん。

「刻印までは考えてなかった。雅が嫌じゃなければ、お互いに刻印を考えて、後日に連絡しようか。日付とイニシャルだけでもいいけど」

「わかった。でも、あんまり素敵な言葉は思いつかないかも」

 でも、幸せに包まれている二人ならどんな言葉も受け入れられるのかもしれないけど、私には無理そうだった。少し恥ずかしい気がした。

「それでもいいと思うよ。結婚式はまだ出来ないから、せめて、リングに刻印を考えるくらいはいいと思う」

 一週間以内に、お互いに連絡してから刻印をして貰い、その後にリングを受取ることになった。一応、よく刻まれる言葉の意味が掛かれた紙を渡されたので、この中から選ぶか、自分の好きな言葉にするか。

 悩みが出来た。

< 1,072 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop