君をひたすら傷つけて
 お兄さんが事前に私のことをお母さんに伝えてくれていたのだと思う。お母さんも泣いてはいたけど、私の方を見てニッコリと笑ってくれた。そして、少し横に動き、もっと私を義哉の近くに近付けようとしてくれた。

「義哉のために来てくれてありがとう。来てくれて義哉も喜んでいると思うわ」

「あの…。私」

「いいの。何も言わなくて。ただ、義哉の傍に居てあげて」


 身体の弱かった義哉のことをずっと覚悟してきたのかもしれないお母さんは私にそう優しい言葉を掛けると私が義哉の傍に寄ることを許してくれていた。棺の中で眠っている義哉が今にも起きてくるのではないかと錯覚してしまいそうなくらいに穏やかな寝顔に私は涙を零した。


 安らかに眠って欲しいと思うから、泣かないようにとは思うけど、そんな簡単に気持ちは割り切れるものではなかった。でも、もう今日でお別れ。


 
『義哉。ありがとう。会えて本当に良かった。』


 私が義哉へ送った言葉の後に、誰にも聞こえないように言葉を紡ぐ。


『義哉をずっと愛している。』


 それが私の義哉への思いだった。


 こんなに苦しい思いをするなら出会わない方が良かった?愛さなければよかった?

 でも、私は出会い、愛した。そのことに後悔はしてなかった。
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