君をひたすら傷つけて
 前はカフェオレやココアが好きだったけど、この頃はホットミルクばかりを飲んでいた。暑いのだからオレンジジュースでも良かったけど、今は熱くてもいいからミルクが欲しかった。

「大学はどう?第一志望に受かったんだよね」

 大学が決まった時にお兄さんにはメールで合格したことを伝えたけど、それ以後、全く会ってなかった。

「随分慣れました。高校の時と違うので戸惑いましたが、今は大丈夫です。今日も急に休講になったので義哉に会いに来ました」

「この後に講義があるの?」

「いえ。今日はないです。お兄さんは仕事に戻りますよね。時間は大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」


 言葉少なげにそういうとお兄さんは運ばれてきたコーヒーに口を付け、そして、私の方に真剣な表情を向ける。何か言いたそうだけど、言葉を選んでいるようにさえ見える。二人の間に流れる沈黙が続く。そして、その口火を切ったのはお兄さんだった。


「顔色が悪い」

「そんなことないですよ」

 義哉が亡くなってからは食事が喉を通らず、身体が急激に痩せていく。頑張って食べようと思っても身体が受け付けない日々が続いていた。この頃、少しは食べれるようになったけど前のようには戻ってない。


「墓の前で藤堂さんを見て驚いたよ。痩せたな。食べれてないのか?」

「大丈夫です。大学に慣れなくて」

「そうか」

 そう言うとお兄さんは私の目の前にあるホットミルクに視線を移した。

「今から食事に行かないか?仕事というのは実は今度仕事関係で使う店の下見に行かないといけなくて」
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