君をひたすら傷つけて
 メニューを開いてみても薬膳を中心とした料理の数々は身体に優しいものを厳選されているのは分かる。義哉を失ってから頑張って食事を取るようにはしているけど、途中で胸が詰まることが多い。正直、イタリアンとかフレンチは無理だった。メニューに並べられた料理を見ながら、助かったと思ったのも嘘じゃない。

「決まった?」

「薬膳の花コースをお願いします」

 前菜の盛り合わせから始まったコースは値段もこの店の中では優しかったし、量も少な目だった。お兄さんは自分が好きなのを食べると言いながらも、結局頼んだのは私と同じものだった、

「この店は女優に人気のあるらしいけど、私には薬膳が身体にいいということしか分からない。女の人が喜ぶ理由はあるのか?」

「こんな風に可愛らしく盛り付けてあって、それでいて、身体に優しいとなると女の子は喜びます。特に、鳥の蒸したのは柔らかくて美味しかったです。漢方を使ったスープは好みが出るかもしれませんが、私は好きでした」


「そうか?やっぱり男には分からないものだね。この店は人気があると聞いていたけど、私には分からなくてね。男はガッツリとした肉が好まれる。女性とは違うね。焼き物よりも蒸し物がいいの?」

「好みが分かれるとは思います。私は蒸し物も好きですが」

 お兄さんとの会話から、これが本当に仕事の一環だと分かる。お兄さんは部屋を見回し、そして、手帳に色々と書き込んでいく。

「いくつか行かないといけない店があるから助かったよ。これで一つは終わった」
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