君をひたすら傷つけて
 お兄ちゃんとの時間は今の私にとって大事なものだった。このままではいけないと何度も思うのに、私はお兄ちゃんからのメールを心から喜んでしまう。

 お兄ちゃんの誘いを断れないのはふと零した微笑みの中に義哉の欠片を感じさせるからだった。その度に私は義哉を思いだし、好きだという気持ちを感じる。あの駆け抜けるような苦しいような愛を忘れることなんか出来ないし、忘れるつもりはない。


「雅。今からでもサークルに入ったらどうだ?大学では色々な人と出会うことによって人生が豊かになる」

 お兄ちゃんは仕事の話をするときくらいに真剣な表情を見せ、私は息を呑んだ。義哉のことを考え思い出に浸る私を現実に引き戻す。

 今日はメールで誘われて中華料理店に来ている。エビチリの美味しいと有名な店で店内は個室がいくつか並ぶスペースとオープンスペースとがあり、外観のイメージよりも中は広い。

 そんな密会でもしそうな雰囲気の店の奥の一室に私は居た。

 真っ白な壁に朱と金の布が飾られ、中央には黒檀のテーブルセット。クロスは朱でマットは白。灯篭を模したシャンデリアは白熱灯の淡い光が室内を染める。

 真っ白な壁に暖色の明かりが影を成すユラユラと私の影が壁に映っていて、そんな影を見ながら、口にエビチリを入れたところだった。
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