君をひたすら傷つけて
 会社帰りの人が溢れるカフェの一番奥の席に座ると買ってきたラテを飲み、さっき買ってきた本を捲る。約束の時間が近づいてくると次第に店内は混みだしてくる。もう少し遅かったら席はなかっただろう。それはいいけど、これからお兄ちゃんにどう話したらいいだろう。


 そして、お兄ちゃんはどう思うだろう。

 客観的な意見を聞きたいと思った。

 大学を決めたくらいの私ならきっと喜んで行ったと思う。でも、今の私はまだ義哉のことが好きで堪らないし、この状況で日本を離れるのが怖いと言うのもある。サークルに入って少し前に進めたけど、まだ自分に自信がない。そんな状況でのフランスに語学留学はリスクが高い。

 そんな思いでラテを飲みながら私は溜め息を零していた。六時二十五分…。約束の時間まであと五分。中々動かないように見える針を見ながらお兄ちゃんを待っていた。

 遅れるというメールは来てないから、お兄ちゃんはきっと時間通りにカフェに来ると思う。そして、時間よりも一分早い二十九分にカフェに入ってきた。カフェに入って私の姿を見つけ歩いて来ると目の前に座った。見計らったように現れたお兄ちゃんと携帯の時計を見比べてしまう。


 時間ピッタリ…。

 お兄ちゃんの性格を表していると思った。そして、お兄ちゃんは私の姿を見つけると穏やかに顔を緩ませた。
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