君をひたすら傷つけて
 最初、カフェに入ってきた時はオフィシャルとプライベートが一瞬で切り替わる気がした。カフェのドアを潜った瞬間、顔を緩めた。そして、私の前に座るとニッコリと笑った。その微笑みにホッとしてしまう私が居た。


「悪い。遅くなったな。思ったよりも駐車場が空いてなくて探していてたら遅くなったな」

「時間通りだよ」

「いつも約束の十分前に着くようにはしているんだ。特に雅を一人で待たせたくなかった。で、相談って何なんだ。雅が私に相談とか珍しいから」

「うん。あのね…」


 お兄ちゃんに相談したいことが会って連絡したのを一瞬忘れそうになっていた。何と言っていいか言葉を探す私はフランス留学の事を思うと自分でも顔が強張るのを感じた。そんな私の心の動きを察知したのかお兄ちゃんはいつもよりも優しい声を出した。

 私がスムーズに話が出来るようにとその雰囲気を作ってくれる。


「ゆっくりでいいよ。先にコーヒーでも飲もうかな。今日は仕事が早く終わったから肩から力が抜ける気がする」

「仕事は忙しいの?」

「忙しいというか、頑張りたいと自分で思うだけだよ。で、雅の相談事ってなに?」

「フランス留学ってどう思う?今日、教授から呼ばれて語学留学しないかって言われたの」


 お兄ちゃんが真っ直ぐに聞くから、さっきまで頭の中でどうやって言おうかと考えていたことがスルッと言葉が零れ、お兄ちゃんは『フランス留学』という言葉に目を見開いた。
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