君をひたすら傷つけて
「フランス?雅はフランスに行きたいのか?」

「行きたいというか、大学を選ぶときに留学制度が整っているということも志望の動機だったけど、今の私では留学なんか考えられなかったけど、急に欠員がでたらしくて、申し込みはしてなかったけど打診された。でも、自分でもどうしていいか分からなかったから、お兄ちゃんに聞いて欲しかったの」

「そうか。フランス留学か。急な話だな」

「うん。思ってもみなかったから驚いたのが一番で、どうしていいか分からなかったからお兄ちゃんに連絡したの」

「そうか。雅はフランスに興味があるのか?」

「興味というか、高校の時にフランスだけでなく世界を見て回りたいと思ったの。だから、大学に入ったら短期でもいいからどこかに留学したいと思っていた。でも、今の私はそんな気分になれないの。でも、教授がせっかく誘ってくれたなら、応募すべきかと頭の中でクルクルと回った」

「それは迷うかもしれないな」

「うん。前は留学したかったけど、今はそんな気持ちになれないの」

「雅。きっと義哉なら行って来いと言うと思う」

「え?」

「雅。フランスに行って新しい世界を見ておいで」

 お兄ちゃんの言葉は簡潔でそのままスッと心の中に入ってくる気がした。その言葉の強さに視線を上げると、穏やかな微笑みを浮かべている。そして、不安を取り除くように優しい言葉を零したのだった。

「雅なら大丈夫。きっといい経験が出来る」
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