君をひたすら傷つけて
 口だけではどんなことでも言える。綺麗ごとを並べるだけではリズさんの気持ちを無にする。それにリズさんも私のことを見てから、このリズさんの秘密を私に伝えたのだろう。誠実に話してくれたリズさんには誠実な気持ちで応えたいと思った。

 綺麗ごとではなく本当の私で向き合いたい。まりえさんとリズさんにも私という人間をもっと知って貰いたいと思った。まだ、今は全部を話したりは出来ないけど、いつか私の話を聞いて欲しい。私にはリズさんのように全てを曝け出すような勇気はない。

 でも、いつか私のことを話せるような気がした。リズさんの真摯な言葉を聞きながら、私はそんなことを考えていた。

「ありがとうございます。話してくれて嬉しかったです」

 私がそういうと、リズさんはニッコリと微笑み綺麗な顔を綻ばせながら私を見つめている。最初はゴージャスで圧倒されるように迫力を持っていたリズさんだけど、こんな風に静かに話していくと心が細やかで優しさを感じる。

『こんな風に強さと優しさを兼ね揃えた女性になりたい』と思う私がいる。そんな私になれたなら、天国にいる義哉は笑って私を褒めてくれるだろう。『素敵な女の子になったね』って。

 恋は今も恋。それは変わらない。

「雅。これからもよろしくね」

「私もよろしくお願いします」

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