君をひたすら傷つけて

「リズは今日、今度のイタリアでのコレクションの件でデザイナーと打ち合わせ。さっき、アルベールの撮影のデザイナーよ。一緒にイタリアに行って、今日はイタリアで宿泊になっているの。それと、まりえは日本に帰るから、こっちで出来た友達と食事に行っているの。今日は遅くなるみたい。だから、私は一人だったから誘って貰って嬉しい」

　アルベールは私の言葉に動きを止めた。そして、飲み掛けていたグラスを口から離すと私を見つめた。

「まりえは日本に帰るの？」

「うん。留学期間も終わりだから。本当は私の方が先に帰るはずだったんだけど」

「雅は寂しいわけで、俺は『救いの神』ってところかな？」

「うん。そうね。今日は誘ってくれて嬉しかったわ。二人が居ないと寂しいの。一緒に住んでいるのもあると思うけど、もう家族も同然なの」

「そんなに仲がいいなら寂しいね」

「うん。本当に寂しいの。まりえの部屋から荷物が減っていって、もう残っているのはスーツケースに入るくらいの服ぐらいよ」

　ワインの緩やかな酔いが次第に私の心を緩めていく。まりえが自分にとってどんなに大切な存在だったかをアルベールに話す。まりえのこともリズのことも何度も聞いているはずなのに…アルベールはニコニコしながら私の話を聞いていて不意に言ったのだった。

「そんなに寂しいなら、俺が慰めようか？」