君をひたすら傷つけて
「半分は本気だよ。俺は雅のガードが緩むのに付け込む狼かもしれない。雅を酔わせて、自分で立つことも出来なくして、歩けなくなった俺のベッドに連れていって抱きたいと思う気持ちもある」

「え?」

 さっきまでの子ども染みた悪戯とは違う真剣な瞳。それなのに、私が怖がらないように優しいベールを言葉に纏わせるのだった。

「なぁーんてね。それが出来るくらいならよかったけど、少しでも雅を傷つけることはしたくないからなぁ。俺は雅が大事なんだ。絶対に失いたくない」

「アルベール」

「今はこれで十分に幸せなんだ。ワインも美味しいしね」

 そういうとアルベールはニッコリと微笑み、またワイングラスに口を付ける。冗談で返さないといけないのに、私は言葉を探していた。でも、頭の中で言葉がクルクル回るけど口から出てこない。

「それとも雅は俺に慰めて欲しい?それならご期待の通りにするよ。お姫様」

「ありがとう。アルベール。やっぱりあなたは優しいわ。優しすぎるの」

 私がそういうと、アルベールは急に笑い出した。大人の雰囲気の漂うバーでさすがに大きな声を出すことの出来ないから笑いを押さえてはいるが、それでも、アルベールの甘い声が響く。

「男に優しいというのは褒め言葉じゃないよ。傷心の俺に付き合って。雅。今日はとことん飲もう。朝まででも付き合ってもらうよ」
< 322 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop