君をひたすら傷つけて
 そんな言葉を零しながら、アルベールは揺れる私の身体をキュッと抱き寄せた。アルベールの広い胸に頬をつけるような形で抱きしめられると身体の熱が増した気がした。こんな風に男の人に抱き寄せられたのはいつの事だろう?義哉が亡くなった時にお兄ちゃんに抱き寄せられたのが最後かもしれない。

「人の体温は温かいだろ。俺はいつでも雅の傍に居る。だから、寂しくなったらこんな風に一緒に飲もう」

 私はアルベールの優しさに頷いたのだった。

 アルベールは私をアパルトマンの部屋の前まで送ってくれると、少し染めた顔のまま私を見つめる。素のままの顔を見せてくれる。作られた笑顔ではない素の顔が私をドキドキさせる。

「何が可笑しい?」

「え?」

「笑ってたから」

 アルベールの言葉に私は自分が笑っているのだと思った。今の私に微笑みをくれるのは…。

 アルベール・シュヴァリエ。

「そうね。楽しかったわ。今日は誘ってくれてありがとう。」

「俺も楽しかった。また誘うから」



『誘ってもいい?』とは聞かずに『誘うから』という言葉にアルベールらしさを感じる。でも、嫌だとは思わない。目の前にいるアルベールは私以上にワインを飲んだのに、少しの酔いは感じるものの、私のように足元が揺れるということはなく足取りもしっかりしていた。
< 324 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop