君をひたすら傷つけて
「送ってくれてありがとう。今日は嬉しかった。おやすみなさい。」

「おやすみ」

 アルベールと別れてアパルトマンの中に入ると急に目の前が回りだす。自分の家に帰ってきたから気が緩んだのが原因だろう。美味しいワインは飲み過ぎてしまった。私よりはもっと多くのワインを飲んでいるのに全くと言っていいほど酔ってなかった。

 窓から明るい朝の光がリビングに差し込んでいる。そんなリビングにはまりえが居て、帰ってきた私を見るとちょっと睨む。睨まれているのは分かるけど、それよりも気持ちの悪さが先だった。

 リビングのソファに倒れ込むように横になると、私の手をちょっと摘まむ。

「朝帰りするのはいいけど飲み過ぎよ。ここまでお酒の匂いがするわ」

 そんなまりえの言葉に笑ってしまう。朝帰りは咎められないのだろうか?

「うん。酔いすぎ。アルベールと何軒かの店を回ってずっと飲んでたの。ワインを何本か飲んだの。でも、楽しかったの」

 リビングのソファに項垂れるように座る私に、まりえは冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと私に渡してくれる。まりえらしいと思うのはきちんとキャップを外してくれているということ。一度座ってしまうと…指一本動かしたくない。
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