君をひたすら傷つけて
「自分が好きだと思う女性の所に他の男が会いに来たのを見るのは気持ちのいいものじゃないだろ」

「好きってなんで?」

「芸能事務所に勤めていると世界中から情報は入ってくる。若手で実力も十分にあると言われるモデルのアルベール・シュヴァリエのことも勿論知っているし、その彼が日本人のスタイリストのことを本気で思っているというのも聞こえてきていた。どこからか圧力が掛かっているのか、雅の名前も顔も表には出てないけど」

 アルベールと一緒に行きだした最初の頃、何度か写真が撮られたことはあった。でも、それはどこの雑誌にも掲載されることは無かったから、アルベールが動いてくれたのではないかとなんとなく思っていた。でも、情報というのは海を越えた日本にいるお兄ちゃんの耳まで届いていた。

 情報は怖い。

「アルベールは本当にいい人だと思う。人間的にも優しいし思いやりもあるし、モデルとしての実力もある。素敵な人だと思う。今は友達として付き合っている。友達としてはとても好きよ。でもね、私は今も義哉が忘れられないの」

「義哉のことは忘れていい」

 義哉はお兄ちゃんの大事なたった一人の弟なはずなのに。

 義哉は私が忘れてしまうことを望んではないと思う。いつまでも私の心の中に居たいはず。お兄ちゃんは違うのだろうか?お兄ちゃんには新しくマネージメントする役者さんがいるからいいの?そんな問いが頭の中でグルグルと回っている。

「なんでそんなことを言うの?私はまだ義哉が…」
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