君をひたすら傷つけて
「義哉が亡くなってもう三年だ。義哉のことを思ってくれる雅の気持ちは嬉しい。だけど、雅には誰よりも幸せになって欲しい。もう、前を向いて歩き出してもいい頃だよ」

 義哉が亡くなっても三年の年月が流れている。でも、私にとっては『もう』ではなく『まだ』。心の中をお兄ちゃんに見せられないのが悔しいくらいに私はまだ義哉に恋をしている。

「アルベールのことは好き。でも、それは義哉を思っていた『好き』とは違う」

「大事なことだから真剣に考えるんだ。彼はお前のことをとても優しい表情で見つめていた。大事にされているんだろ。それが分かったよ」

「よくして貰っている。大事にして貰っていると思う」

「そうか。フランスの生活で雅が寂しい思いをしてないかと心配していたからよかった」

 お兄ちゃんはそういうと私に優しい顔を見せた。お兄ちゃんは私が日本を離れた後もずっと心配してくれていた。留学をしている途中で大学を休学し、別な学校に入学し直した私の行動は普通ではない。

「心配していた?」

「ああ。少しだけどな。雅は自分の考えで生きていくことが出来るとは思っていても心配はした」

 日本に居た時に一緒に過ごした時間を思い出させるものだった。三年の時間を過ぎても…私の中でお兄ちゃんの存在は変わらない。傍にいるだけどホッとする。

「雅…。まだ仕事をしているのだろ。もう現場に戻らないと」

「でも、もう少し話したい」

「仕事が終わってから時間があるなら一緒に食事に行かないか?雅がよく行く店に行ってみたい」


『うん』と言い掛けて言い澱んでしまった。
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