君をひたすら傷つけて
『今日は会えない』と本当は私の方から言って謝らないといけない。それなのに私の気持ちを察したのか微笑みと共に私を気遣ってくれた。優しくて思いやりがあって、私には本当にもったいない人なのに。素敵な人なのに。私は恋は出来ない。友達としての『好き』しか抱けない。

 アルベールのことを好きになれたらいいのにと思うのに、気持ちばかりは思い通りにはいかない。義哉のようにアルベールを思うことが出来ない。でも、あるべーるにはきちんと話したかった。撮影の合間にある少しの時間にアルベールの方に行くと、アルベールはニッコリと笑った。

「今日の撮影は結構ハードだね」

「さっきの人のことなんだけど」

「うん」

「彼は私の高校の時好きだった人のお兄さんなの。今日は仕事のついでに会いに来てくれて。会うのは三年ぶりだったから、アルベールの話の途中に走り出してしまってごめんなさい」

「彼が義哉くんのお兄さん?」

「義哉が亡くなった時に壊れてしまいそうな私を支えてくれた人なの。フランスに来てからもずっとメールとか電話とかで支えてくれていたの。フランスに来ることを後押ししてくれて」

「ん」

「今日は本当にごめんなさい。一緒に食事をしようと誘われたから行ってきてもいい?」

「許さない。だから、彼が日本に帰ったら俺の食事に付き合うこと。とりあえず二回は確実だから。店は雅が探すこと。じゃ、撮影が始まるから…」

 ニッコリと綺麗な微笑みを残し、アルベールは眩しいライトの中に消えていく。休憩が終わり、撮影が始まるところだった。アルベールが後ろ向きのままで大きく深呼吸するのが分かる。アルベールはライトの中に入り、こちらの方に振り向くと撮影が始まった。
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