君をひたすら傷つけて
 お兄ちゃんは困った顔をしながらも酔って子どもに戻って駄々を捏ねる私に優しく言葉を零した。店を出て周りの店を見回してもほとんどの店は閉まっている。

「明日早く迎えにいくから。今から部屋に送るから、明日起きたら、連絡しろ。そしたら迎えにくるから。そして、雅が観光案内をすること。旅行会社のパンフレットにあるようなものじゃなくて、地元の人が楽しむような店とか場所に連れて行くこと。どう?」

 お兄ちゃんが望むなら、どこにでも案内したい。いくらでも観光に付き合う。でも、今日はどうしたのだろう。どうしてもお兄ちゃんと一緒に居たい。離れたくない。そんな思いと酔いが私を大胆にする。素面の私では言えなかったと思う。少し残った理性もお兄ちゃんに会ったという嬉しさの前には役には立たない。

「お兄ちゃんの部屋に行って飲みたい。」

 私の言葉にお兄ちゃんは身体の動きを止めたような気がした。それは私が酔っているからでそう見えただけかもしれない。でも、それは一瞬でお兄ちゃんはニッコリと笑う。

「そんな我が儘を言わないで。一応、私は男だし、雅は女。こんな夜遅くにホテルの部屋というのはよくないよ。さ、雅の部屋に送るから」

「お兄ちゃんが私を襲ったりするの?」

 お酒にせいにするわけではないけど、普段には口に出来ないようなことがドンドン零れてくる。そんな私のことをお兄ちゃんはあやすように優しい言葉を零した。
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