君をひたすら傷つけて
 同じ言葉なのに意味が違う。

 あの時、私は義哉を知りたいと思い、義哉を求め、叶わぬ夢となってしまった。『傷つける』という言葉に反応してしまったのは、お兄ちゃんの声が義哉に似ているからだった。義哉が成長したら、きっとお兄ちゃんの声に似ていただろう。もしかしたら、今日のお兄ちゃんの姿のように成長していたのかもしれない。スーツの似合う大人の男の人になっていたかもしれない。

 たらればを考えても仕方ないと思うけど、私はお兄ちゃんの上に義哉の姿を重ね、お兄ちゃんを通して義哉を感じている。兄弟だからなのか、顔も性格も違うのにふとした瞬間に似ている。今日一緒の時間を過ごして、それはもっと深く感じた。

 日本を離れて二年。ずっと日本に居たらこんな風にお兄ちゃんに義哉を重ねることはなかったと思う。でも、二年という年月が私を惑わせていた。

 気付くと私はベッドに横になったまま寝てしまっていたらしい。化粧も落とさずに寝てしまったので、こんな姿をリズに見られたらきっと怒られる。それに時間も想像を越えて過ぎていた。私の予定では朝の五時くらいには起きて、お兄ちゃんの泊まっているホテルまで行き、七時の朝御飯は一緒にと思っていた。

 実際に起きたのは九時過ぎで時計を見てガッカリとする私がいた。携帯を見るとお兄ちゃんからのメールが着ていて、

『おはよう。雅が起きたら連絡をして欲しい』

 メールが私の携帯に届いた時間は私がぐっすりと寝ていた七時だった。遅くまで飲んでいたのにお兄ちゃんのメールの文面は既に起きて一時間は経過しているような感じだった。
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