君をひたすら傷つけて
「あの日からずっと俺は雅のことを考えていた。雅のことばかり考えていたら、色気が増したってカメラマンに言われた。アルベール・シュヴァリエはクールが売りなのにな。でも、カメラマンは絶賛だぞ。そうしたら、何故か新しくブランドの専属モデルにも決まった」

 アルベールは軽く言うけどブランド名を聞いて驚いた。その専属ということはモデルとして一段階上がったということ。この仕事をやり遂げるとアルベール・シュヴァリエの名前は世界中を駆け巡るくらいに大きな仕事だった。

 有名なファッション雑誌の表紙を飾ることも遠くない未来だろう。

 私が学校を卒業したのよりもお祝いをしないといけないことだと思う。でも、この世界にいるのに、アルベールがモデルに決まったことを私は知らない。そんな私の疑問に応えるように静かにアルベールの声が響いた。

「決まったばかりだからオフレコ。来週には発表されるよ。リズもまだ知らないと思う。だから、発表されるまでは雅も内緒で」

「おめでとう。凄いね。アルベールなら大丈夫。何度も一緒に仕事をしたけど、私が太鼓判を押すから」

 私がそういうとアルベールはクスクスと笑う。

「雅はいいな。自分の中で色々考えていたことを一気に吹き飛ばしてくれる。モデルは光栄なこととは思うけど、不安もある。それが今の本音かな」

「どんな仕事でも真剣だからそんな風に思うんだと思う。アルベールはアルベールのままでいい」

「デザイナーが作る世界をどう表現したら綺麗にその世界観を伝えられるのかって。でも、そんなことを考える前に雅の言うとおりにそのままの俺で頑張ってみる」
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