君をひたすら傷つけて
 新しい仕事の話をしていると急にアルベールは真剣な表情を零した。手に持っていたワイングラスは経年して磨かれた木のカウンターにそっと置かれ、私の方を真っ直ぐに見つめてくる。

「雅。俺の専属のスタイリストになってくれないか?これからモデルとして頑張りたいと思うからこそ、自分の周りには信用できるスタッフで揃えたい。雅が俺の傍に居てくれたら、俺はもっといい仕事が出来そうな気がする。雅の力を貸して欲しい」

 学校を卒業したばかりの私にアルベール・シュヴァリエの専属のスタイリストというのは願ってもないくらいのいい話だった。学校の時の友達に話すと羨ましがられるだろう。それになくてもリズの傍で働きながら学校に通っているだけで羨ましがられていた。

 でも、心のどこかで躊躇してしまう私がいる。本格的に仕事をしているリズと比べると、当たり前だけど、明らかに劣っている。

 技術もだけど、覚悟も私には足りない。

 これから世界に出て行こうとしているアルベールの足を引っ張ってしまいそうだった。アルベールにとって大事な時期だからこそ慎重にならないといけない。仲のいい友達だからというだけで、受けていい話ではない。

 それくらいは私でも分かる。

「光栄な話だけど、少し考えさせて貰ってもいい?」

「雅が納得するまで考えて貰っていい。それまで待つから」

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