君をひたすら傷つけて
 アルベールはそれだけいうと、フッと息を吐き、穏やかな表情を浮かべていた。そんなアルベールを見ながら、私も緊張が緩やかに解けていく。

「それにしても凄い話。アルベールの活躍が楽しみだわ。今度の新作のコレクションもだけど、雑誌の表紙とかもアルベールが飾ると思うとドキドキしちゃう」

「仕事は頑張るけど、俺には雅のことが気になるよ。あの人と過ごしてどうだったのかって。とっても親密そうだったし、正直、どうしようもないくらいに妬いた。あんなに穏やかで素の表情を零す雅を見たのは初めてだったし」

 仕事の話から一転。

 急にアルベールがお兄ちゃんのことを話し出したので驚いた。アルベールはあの時、お兄ちゃんの姿をチラッと見ただけだと思う。そんな微かな時間で妬くほどのことは思い出してもなかった。あの時は仕事中だったから、夜に会う約束をしただけだったはず…。だから、お兄ちゃんのことなんだろうかと思ってしまうほどだった。

「あの人ってお兄ちゃんのこと?それなら妬く必要ないわよ。本当のお兄ちゃんみたいな人だし。高校の時からずっと私を支えてくれているの。面倒見がよくて優しい人だけど、それ以上の関係はないわ」

「でも、血が繋がっているわけではないだろ」

 アルベールがそこまでお兄ちゃんのことに拘る必要はないと思う。それでも、アルベールにとってお兄ちゃんは気になる存在らしい。お兄ちゃんのことは義哉のことを話した時にアルベールには話していたから、分かっていてくれると思ったのに、アルベールの反応は私の想像以上だった。
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