君をひたすら傷つけて
「お兄ちゃんは仕事のついでに私に会いにきてくれたの。でも、行った場所は私の通っていた学校とか仕事場とか…川でベンチに座って話したりとかだから、そんなに特別なことをしているわけじゃないし」

「学校に仕事場に川か。彼は雅のことを好きなんじゃないのか?」

「好かれているとは思うけど、それって恋愛としてではないわよ。妹の様に私を大事にしてくれているだけ」

「だといいけどな。さあ、そろそろ帰ろうか?雅は明日も仕事なんだろ」

 時計を見るとまた時間は思っていた以上に過ぎていた。モデルの仕事をしているアルベールは睡眠も大事な仕事だ。それなのに、この時間は遅すぎる。大事な仕事を前にしてアルベールは一段と体調管理も必要だった。

「仕事だけど大丈夫。でもアルベールも仕事でしょ。遅くなったね」

「でも、楽しかった。今日はよく眠れるよ」

「それならいいけど」

 夜も遅くなったので、アルベールにいつものようにアパルトマンの下まで送って貰っていた。ビストロから私の住んでいるアパルトマンまではそんなに遠くはない。でも、必ずアルベールがアパルトマンまで見送ってくれる。

 二人で並んで歩くのも何回目だろう。そんなことを考えながら歩いているとアパルトマンに着いてしまった。見上げると部屋の電気は付いていた。

 リズが帰っているのだろう。
< 373 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop