君をひたすら傷つけて
 いつもは真っ暗なアパルトマンの部屋に電気が点いているだけで胸がキュッとなる。一緒に過ごしていたまりえが帰国し、リズが前のように毎日は帰宅は出来なくなっていた。

 仕事が忙しいのは分かっていたから、私は自分に出来ることだけをしていた。リズが居ない時も色々なスタイリストと一緒にアシスタントに入ることもあった。勿論、そのデザイナーはリズの仕事相手で全くの知らない人は居ない。私は守られている。

 アルベールも見上げた部屋の明かりにリズの存在を感じたようで、フッと少し顔を緩めた。

「まだ仕事しているのかな?」

「うん。イタリアで本格的に事務所を開くからその準備みたい。私は詳しいことは知らないけど」

 イタリアで事務所を開くと決めてからのリズの忙しさは半端ない。精力的にこなしている姿を見ていると私も頑張ろうという気持ちになってくる。

「雅もイタリアに行くの?」

「今は何も考えてないの。リズの手伝いでイタリアに行くかもしれない。それに、お兄ちゃんは日本に帰って来いというし、まだ私はこっちで頑張るつもりなんだけど」

「日本に帰るということもあるのか?」

「ないとは言えないけど限りなくないと思う。日本には仕事が無いし、リズはヨーロッパを中心に仕事をしているから私もそうなると思う」

「日本に仕事がないのに帰って来いって言ったの?」

「お兄ちゃんは芸能事務所に勤めていて、モデルやデザイナーにも知り合いが多いからそう言うけど、そんなに簡単なものじゃないのは私も知っているし」

 私は自分の力で道を切り開きたかった。お兄ちゃんに仕事のことで頼るつもりはなかった。

「じゃあ、アルベール。送ってくれてありがとう。おやすみなさい」
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