君をひたすら傷つけて
 アルベールならいくらでも素敵な人と出会うことが出来るのに幸せになる道がいくらでも開けているのに、不器用で初めての恋を忘れることの出来ない私を思ってくれるのだろう。

「傍に居るだけでいい」

 包まれる腕の中でアルベールの胸に頬を寄せると、驚くほど激しい鼓動がシャツ越しに私の耳に届いた。私以上にアルベールは緊張しているのかもしれない。

 そんなアルベールを大事にしたいと思った。いつかこの溢れるばかりの思いに応えられるかもしれないと思った。

「アルベールのところに泣きにくる」

「それでいいよ」

 曖昧な言葉でしか私はアルベールの思いに応えることは出来なかった。『好きだ』と言われた返事にはなってないと思う。『愛してる』と言われた返事にはなってないだろう。

 それでも私には精一杯でそれをアルベールは分かっている。アルベールが私の傍に居たいと思うなら傍に居ようと思った。恋に答えは無いというけど、もしも、これに答えがあるとするなら、この答えは間違っているということだけは分かる。

 どんなにアルベールを傷つけるかを分かっていて、私はその道を歩く。義哉を好きだという気持ちは消えないだろう。義哉に出会う前にアルベールに出会っていたら、間違いなく私はアルベールと共に生きることを選んだと思う。そして、彼の思いに私の全てで応えられたかもしれない。
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