君をひたすら傷つけて
「可愛い。いつも可愛いけど、今日は一段と可愛い」」

 ボソッと呟く様な声が私の耳に届く。その言葉にホッとした。可愛いと言われたというよりもいつもと違うので引かれるのではないかとも思ったけどよかったと思う。

「そう?」

「うん。でも、余りに可愛くて…ちょっと動転してる。まさか、雅がそんな格好だとは想像もしてなかった」

「リズが一緒に出掛けるならって洋服も化粧も全部してくれたの。恥かしいからそんなに見ないで」

「俺の言葉聞いてた?俺は雅のことを可愛くて動転していると言ったんだよ。可愛い格好は反則だよ。今日は思いっきり甘やかすから覚悟して。友達の線を崩すつもりはないけど可愛い雅を前にして俺をこんなにドキドキさせた責任は取って貰うから」

 アルベールはニッコリと笑い、私の前に手を差し出す。そして、綺麗な微笑みを浮かべたのだった。

「普通でいいよ」

「そういうわけにはいかないよ。じゃ、お姫様。食事に参りましょう」

 いつものアルベールも優しい。でも、今日のアルベールはいつもよりも数段優しい。レディーファーストの精神が働くのか、今日はくすぐったいように扱うつもりみたいだった。

「服でそんなに違うの?」

「違うよ。雅が俺と一緒に出掛けるのに可愛い格好をしてくれたのが嬉しいだけ」


『今日は別の店に行くよ』とそんな言葉を零して連れて行かれたのは有名なレストランだった。ドレスコードのあるような店でも今日は大丈夫だった。そのくらいリズの技術は素晴らしかった。
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