君をひたすら傷つけて
 アルベールが私をエスコートしたのは普段着では行くことが出来ないような店だった。予約だけでも断られることが多いと言われるそのレストランに勿論予約なんかしていない。

「ここなの?」

「うん。来たことある?」

「ないけど」

「味は保障するよ。味も美味しいし、雰囲気もいいと思う」

「それは知っているけど」

「名前は知っているんだね」

「うん。でも」

 名前は知っているけど、普段の私は学校に行きながら働いている学生だから入ったことはない。ドキドキしている私にアルベールは安心させるように微笑むけど私は緊張の余りドキドキも最高潮だった。そんな私とは裏腹にアルベールは自信満々だった。私の腰にそっと腕を添えるとスマートにエスコートする。

 大きな木製のドアを見るだけでもこの店の格が分かり、一見では入れないのではないのではないかと思う。それなのにアルベールは入れると思っているようだった。

「予約してないでしょ。大丈夫?」

 経年して黒光りするドアの磨き抜かれた真鍮のノブに手を掛けたアルベールに私は声を掛けた。入る前の今なら引き返すことも出来る。アルベールは有名なモデルではあるけど、だからといってこの店は一見で入れるような雰囲気ではない。それなのに、アルベールは敷居を感じないかのように中に入ろうとした。。
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