君をひたすら傷つけて
「今日はアルベールの部屋に行っていいの?」

「それは大丈夫。理性が決壊しないように、それなりの対策もしてきた」

「何をしたの?」

「朝からジムに行ってランニングと筋トレをしてきた。結構な距離を走ったからお腹も空いているし、身体も疲れているから大丈夫。安心していいから」

 そう言って爽やかな笑顔で話すアルベールを見てさっきまでの緊張が少し解けたのか、肩の力がふわっと抜けた。理性の決壊を防ぐためにどのくらいの距離を走ったのだろうか?聞いてみたいような気もしたけど、その距離を聞いて驚きそうな気もしたので聞かないことにした。

「アルベール」

「ん?」

「ありがとう」

「ありがとうと言われるのも微妙なんだけどね」

 アルベールはクスクス笑いながら気持ちよさそうに車を走らせている。そんな横顔を見ながら、私は幸せだと思った。このまま時間が穏やかに過ぎてくれたらいいと思った。

「今日は何を作ってくれるの?」

「シーフードドリア。上手に出来るか分からないけどまりえに教えて貰ったから大丈夫だと思う」

「シーフードは好きだし、ドリアも好きだよ。雅が作ってくれるだけで嬉しいのに、好きな物となると楽しみだ。ワインは白がいいね。貰ったのにいいのがあるからそれにしようかな」
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