君をひたすら傷つけて
朝の光がカーテンの隙間から部屋の中に細く微かな筋を作っていく。その光が最初は細く微かな線だったのに、次第に何本も何本もアルベールの寝室に降り注いでいた。その光が少しずつ強くなっていくのを私はベッドの中で見つめていた。私の身体にはアルベールの腕が絡みついている。後ろから抱き寄せられた私にはアルベールが起きているのかいないのかさえわからない。

 少し身体を動かすとアルベールの腕はストンとベッドに落ちた。アルベールは寝ているようだった。私はゆっくりとベッドから降りると床に置かれてあった服と下着を持ってリビングに向かった。寝室を出ると真っ白な光が部屋を包んでいて、寝室から出てきた私は自分の顔を見て肩を落とした。最悪な表情で泣き腫らした目は一晩中泣いていたのが分かってしまう。

 シャワーを浴びて着替えをしても目の赤さだけは取れなかった。シャワーを浴びるだけでも私の目から涙が零れてしまうのだから、赤さが消えないのは仕方なかった。

 テーブルの上に書置きを残して私はアパルトマンに帰ることにした。ここで帰ったらアルベールをもっと傷つけてしまうだろう。それでも私は起きてきたアルベールに顔を見られたくなかった。

『ごめんなさい。また、連絡します』

 これを見てアルベールが傷つかないわけはない。それでも、ここに今、居ることが出来なかった。見られたくなかった。好きだけど受け入れられないという現実から逃げたかった。私は臆病で狡い。自分のことだけでアルベールの気持ちを考えることも出来ない。自分勝手な人間だということを痛いほど身に沁みていた。
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