君をひたすら傷つけて
 床に落としたら大変と注意をしながら階段を上がっているところで高取くんと擦れ違った。高取くんは私の手にあるプリントを見るといつもの優しい微笑みを私に向けた。


「藤堂さん。運ぶのを手伝うよ?教室でいいの?」

「大丈夫よ。一人で運べるから」


 そうは言いながらもクラス全員分の書類は重たい。我ながら可愛くないと思ったけどこれが私だった。甘えることは苦手だった。でも、お礼だけ言いたいと思った。


「ありがとう」


 背中を向けていた高取くんは私の言葉を聞いてニッコリと笑う。その綺麗な笑顔にドキッとした。意地を張った結果なのに綺麗な笑顔を見せられると困る。


「今度は手伝わせてね。僕も男だし。力はあるよ」


「うん。その時はよろしく。」

「でもさ、僕ね。今から教室に戻るから自分だけ手ぶらはちょっとね。だから、少しだけ持たせてね」

 そういうと高取くんは私の手の中にある書類を半分…。それよりももっとたくさんの書類を持ってくれた。私が意地を張ったのも困らない言葉と共に…。

「これで恥をかかなくてすむよ。ありがとね。藤堂さん」

「ありがと」

 実際に手の上から書類が減ったのだから軽い。でも、私の心はもっと軽くなっていた。廊下を歩いているとフッと思い出したかのように高取くんが話しかけてきた。

「今日の放課後時間無いかな?」

「塾があるの。もうすぐセンター試験だし。」

「そっか。じゃあ、センター試験が終わったら一緒に遊びに行かない?」
 
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