君をひたすら傷つけて
渡された紙の束を見ると細かな字で書きこんである。細かな説明は一切省いた指示書を見ながら、リズが来日するまでの間、エマさんの元でスタイリストとして仕事をすることになりそうだった。事務所にまりえが居るならフランスでの生活の再現を感じさせた。

 エマさんの事務所での最初の仕事は雑誌の撮影だった。ファッション誌ではなく、インタビュー記事の女優が身に着けるものをクライアントの依頼を考えながらスタイリングしていく。決まった洋服以外の小物はその場で変えるのか、いくつかのバージョンが準備されていた。

 簡単なようで難しいと思う。モデルの顔によっては似合う色と似あわない色がある。写真で服と小物を合わせてみて、似合ったからと言って、現物のモデルが似合うとは限らない。これはリズが教えてくれたことだった。その場の雰囲気に合うように用意することがスタイリストとしての仕事だと。

 事務所を開く前から仕事がある事務所がどのくらいあるだろう。それも日本人でなくアメリカン人のエマさんの事務所だ。太い繋がりでもない限り難しいだろう。

「本当に凄い」

 渡されたリストを見ながら、準備をして、ついでに棚の整理まで一緒にしていると急にドアが開いた。

「雅。ちょっと休憩しよ。登記の司法書士が来る前に簡単だけど食事をしないとしばらく何も食べられないかもしれないから
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