君をひたすら傷つけて
洋服や小物を選んでいると楽しいし、この仕事が好きだと思う。リズの影響で始めたけどこんなにも楽しい。そんなことを考えている間に篠崎さんは会計を済ませていて、私の前に立っていた。手にはこの店の紙袋が持たれていた。

「ありがとう。雅さんのお蔭で素敵な服が買えたよそろそろ送るよ」

「緊張したけど気に入って貰えたならよかったです。でも、駅も近いですし、私はここから自分で帰ります」

「ダメ。雅さんを一人で帰らせたと高取に知られたら怒られる。それとも高取を呼ぶ?」

「そんなことないです。高取さんは怒ったりしませんよ」

「絶対に怒られる」

 目の前の篠崎さんは真剣そのものという感じで、その勢いに押されるように私は断れなくて…『おねがいします』と言っていた。

 最初は緊張したけど、篠崎さんが普通に話をしてくるので緊張が解けていた。柑橘系の優しくて爽やかな香りが辺りに漂っている。

「雅さん。今週末の予定はありますか?」

「今のところ何もないです」

「絶対に空けておいて下さい。高取は絶対に休みを取って、雅さんとの時間を過ごすつもりです。それに俺と雅さんと一緒に出掛けたことを知ると恨まれそうだから、絶対に空けておいてくださいね」

 恨むって…。そんなことあるわけない。

「高取さんは私のことを大事にしてくれますが、それは昔からの知り合いというのもあるからです。だから、篠崎さんを恨んだりはしないです」
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