君をひたすら傷つけて
「少し歩こうか」
「うん」
お兄ちゃんの言葉に従って二人で砂浜まで降りてゆっくりと歩く。サラサラとした砂は歩き難い。ふとよろけた瞬間にお兄ちゃんの腕に捕まってしまった。シャツ越しにお兄ちゃんの温もりを感じる。
「大丈夫か?」
「うん」
お兄ちゃんは立ち止まり、腕に捕まる私の頭を軽く撫でてくれる。そんな優しい手の動きに目を閉じると不意に頭の上からお兄ちゃんの掠れるような呟きが聞こえてきたのだった。いつもの優しい声ではなく、苦しげな色を滲ませているように感じた。
「アルベール・シュヴァリエという男はいい。正直、あのルックスだから心配もした。でも、雅のことを本当に愛してくれているみたいだし、それに流れてくる評判も悪くない」
「心配してくれたの?」
「ああ。雅が悲しむのは見たくない」
私の心に今も義哉がいるようにお兄ちゃんも心の奥に義哉がいる。まだ癒えることのない痛みをお互いに抱えているのに、それを隠して私もお兄ちゃんも笑う。
「もう心配しないで」
「だな。雅もこれで幸せになれる。こんな風に会うのもこれが最後だな」
「え?」
「アルベール・シュヴァリエも男だ。自分の大事な人が昔からの知り合いとはいえ、他の男に会っているのを良しとはしないだろう。俺が雅のことは妹のように思ってはいても、本当の妹ではないから、こんな風に会うことは出来ないな」
「うん」
お兄ちゃんの言葉に従って二人で砂浜まで降りてゆっくりと歩く。サラサラとした砂は歩き難い。ふとよろけた瞬間にお兄ちゃんの腕に捕まってしまった。シャツ越しにお兄ちゃんの温もりを感じる。
「大丈夫か?」
「うん」
お兄ちゃんは立ち止まり、腕に捕まる私の頭を軽く撫でてくれる。そんな優しい手の動きに目を閉じると不意に頭の上からお兄ちゃんの掠れるような呟きが聞こえてきたのだった。いつもの優しい声ではなく、苦しげな色を滲ませているように感じた。
「アルベール・シュヴァリエという男はいい。正直、あのルックスだから心配もした。でも、雅のことを本当に愛してくれているみたいだし、それに流れてくる評判も悪くない」
「心配してくれたの?」
「ああ。雅が悲しむのは見たくない」
私の心に今も義哉がいるようにお兄ちゃんも心の奥に義哉がいる。まだ癒えることのない痛みをお互いに抱えているのに、それを隠して私もお兄ちゃんも笑う。
「もう心配しないで」
「だな。雅もこれで幸せになれる。こんな風に会うのもこれが最後だな」
「え?」
「アルベール・シュヴァリエも男だ。自分の大事な人が昔からの知り合いとはいえ、他の男に会っているのを良しとはしないだろう。俺が雅のことは妹のように思ってはいても、本当の妹ではないから、こんな風に会うことは出来ないな」